第26回 伝説のおっさん
~休日・商店街にて~
まー、行ってみない?この辺に「洋風お好み焼き」のお店が出来たんだって。
~洋風お好み焼き「ドルノ」~
卵多め、生地が硬めでソースに工夫があるのね。ケチャップと辛子と・・マヨネーズかな。
ありがとうございます。先月テレビで紹介してもらって。遠方からも来てくれるんですよー。
~20分後~
アゲアゲくんが二人!?なんで??いつもの変身じゃないよね?
まず僕はアゲアゲくん。アゲアゲ界から来た使者。アゲ者です。
アゲ者は進化するんです。課長→部長→専務みたいに。
通常は「アゲアゲくん→アゲアゲさん」と進化するのですが。
アゲアゲさんにならず、アゲおっさんになった。という唯一無二のアゲ者がいる。
僕が帰りたくなったとき。もしくは帰還命令が出た場合ですね。大きく分けて。
でね、アゲアゲ界にずーーーーっと帰らないアゲ者がいるんです。
伝説ではアゲおっさんが人間界にいる年数は1000年!
「常識を越える滞在期間ゆえにおっさんになった」というのが有力説。ただ真相は謎。「都市伝説」と言えますね。
アゲおっさんはずっと消息不明でした。ただ存在はしているらしい。噂だけは絶えない。
そのアゲおっさんと出会えるとは・・・人間界って刺激的!
超有名人のアゲ者なのね・・。とりあえず大事なことは・・・。
カラアゲ、コロッケ、トンカツ、エビフライ食べたいー!!
分かった!買ってくるから待ってなさい!さっきお好み焼き食べたのに??
さっきのアゲアゲくん、初めてみるワガママだったなぁ。アゲおっさんのせい?
いきなりビール要求して買物に行かせるなんて。伝説とはいったい・・・
アンタの頑張り無駄やないで。この子らにちゃーんと届いてるで。
あなたーをアゲるためーならー。ついていけるわたしー♪
アゲおっさんはなんでウチに来たの?ビール買ってきたんだから教えてよ?
先月テレビでな。東京にある洋風お好み焼きを紹介してる番組を観てん。
「洋風」ってなんやねん!?って思うやんか。食べてみたいやんか。
でも東京遠いやん?お金ないやん?貯めなアカンやん?
必死でお金作ってなぁ。薄っぺらのボストンバックで北へ北へ向かったんよ。花の都大東京や!
ワシはお好み焼き愛してんねん。もう星の数ほどのお好み食べてきたよ。テレビチャンピオン出たらワシ優勝するよ。そんなワシでも「洋風」は初めてや。ホンマにウマいんか。ただの客寄せちゃうんか。
一口食べて不味かったら「お好みなめんなや!」って店長どついたろ思うてたよ
けどちゃうかった。ここのお好み焼きホンマ美味かったわぁ。
ワシ、感動したよ。「やっぱ人間界最高やねぇ」思うたよ。
せやろ?ただな。お好みめっちゃウマかってんけど大問題あってん。
お好みはウマかった。ただワシの財布は限界やった。「大東京で洋風お好み焼きを食う」このためだけに頑張ってきたワシと財布や。
例えるなら「あしたのジョー」や。「燃え尽きちまった真っ白に・・」の矢吹丈や。
なんと!店にアゲ者がおる。お好み食うてる。金はどないしたんやろ。なんや人間と一緒に食うてるやないか。
ワシ、アゲアゲ界の伝説やで?ワシが住むっちゅうことはやで?
福の神自ら「よっしゃ!住んだろ」言うてくれてるんや?もったいない思うやろ?
あ!分かった!金か。金やな。最近の人間はなんや、なんでも金に見立てるからな。悲しいこっちゃで。
「コイツ住まわせたら金かかるわぁ」思うてんねやろ?
ワシを金食い虫の役立たず。能なしポンコツに思うてるわけや。
パチンコ、麻雀、競輪、競馬。その他もろもろ賭博産業がワシの稼ぎや。ギャンブラーやねん、ワシ。
ただ宝くじはアカンねん。あれ、運任せやろ。ロトはやるけどな。
分かった!分かったて!じゃあワシのアゲアゲ学教えたるがな。
アゲ親学はアゲアゲくんが編纂した親向け。最新のもんや。
ワシのアゲアゲ学はもっと広いねん。原典アゲアゲ・バ・イーブオからの人生哲学。まぁ古典やな。
これめっちゃサービスやで!?誰にも言うたらアカンで!?
えーと大昔にいたエライ人よね。名前は聞いたことが・・
秀吉は農民から天下人になった日本一の出世男や!知らんのか!?
何年前やったかなー。秀吉がな。木下藤吉郎って名前のときおうてん。
えらい明るい性格でな。「この兄ちゃんモノなるで!」思うて一緒にいたんや。
「中国大返し」って事件あるやん?秀吉が天下とることなった事件や。岡山から京都へ10日で帰ってん。
秀吉の主人、織田信長は本能寺で明智光秀に討たれてもうてな。秀吉は岡山に出張中やった。光秀は京都や。
ワシ、相談受けてん。「どないしましょ?」って。「帰るべきやで」ってワシいうてん。
「分かりました!」言うて秀吉は帰ってん。そんで明智光秀に勝って天下とったんや。
ワシがおったら、旦那はん大出世間違いなしやで!天下取ったれやー!
よっしゃ!今日からワシがこの家の旦那や!甘えてえぇで!
ホンマの旦那はん帰ってきてる間はワシどっかいくがな・・。野暮やないでー。
福の神なんでしょ?秀吉に天下取らせたんでしょ?どこでも住まわせてくれるわよ。
アゲアゲ界に帰らない理由は知らないけどさ!伝説のアゲおっさんがウチにこだわることないでしょ!
・・・ワシはな。アゲアゲ界に帰らんのやない。帰られへんのや・・・
どの世界にもおるやろ。ワシ、アゲアゲ界のアウトローやったんや。
「はみだしもん」って言った方が分かるか?不良やロクでなしやな。
ワシが人間界に来た理由はな。自分の都合やねん。アゲアゲ界に居場所なかってん。
若かってんなぁ。 はみだしもんのワシはな。「オレは悪くない。アゲアゲ界が悪いんや!」そう思いたくてコッチ来たんよ。
でもな。一緒やった。人間界にもワシの居場所なかったわ。
※以下もアゲおっさんのセリフです。
場所やなかってんな、問題は。ワシや。ワシそのものが間違いの元やったんや。
人間界でもワシはアカンかった。「アゲアゲ界帰ろうか」とも思った。
でも・・・ワシ自身が変わらん限りどこ行っても結果は一緒や。そない思うてん。
ワシ、伝説やないねん。スゴい評判が一人歩きしてるだけ。全部噂やねん。
ホンマのワシは変わる勇気のない、はぐれ者なんや。
もう何千年も放浪してんねん。
そうやって放浪してたら・・・おっさんになってもうた。
今日、お好み焼き屋でアゲアゲくんみたときな。めっちゃ幸せそうやった。
「僕はこの世界に来て良かった」そんなアゲアゲくんの声が聞こえた。
今な、人間界めっちゃ下がってるわ。ワシの知る中でも最大級や。
そんな中におってな。
「来て良かった」て言えるアゲアゲくん。すごいやんか。なんでそんなセリフ言えるのん?
一緒にお好み焼き食べてるこの女性。この人に秘密あんのん?
そんなこと思たらワシ・・・キミらの事、うらやましなってなぁ。
「このコらと一緒に住めたら、今度こそ変われるんちゃうか」
「ワシ、この世界来て良かったわ」そんなセリフが言えるんちゃうやろうか。
ワシもこうなりたいって。あやかりたい思う。もう一回やり直したいって思う。
ワシは長い間おるだけの昼行灯や。年重ねただけ。誇れるものは年齢だけのアゲおっさんや。
ムリいうてスマンかった。一人でさまようことがワシの出来ることなんかもしれんなぁ・・。
でもな。久々に大勢でビール飲めて。若い子らと話せて。ホンマ嬉しかったで。
・・えぇのんか?ワシ、おっさんやで?アゲアゲくんみたいに若ないで?
私も会社員だからさ。秀吉に天下取らせた人生哲学。教えてよ!天下とったるでー♪
敵か味方かアゲおっさん
ほぼ学び0で終わってしまった今回。
ミドリさんの家にアゲおっさんが住むことになりました。
学びがあるとすれば、2つ。
アゲおっさんが語った「自分自身が変わらないと、場所を変えても結果は同じ」がまず一つ。
成功する人は、どのジャンルにおいても結果を出せます。
大事なことはどのジャンルにおいても同じなのです。
反対に言えば、大事なことを知らなければ、どこへいっても失敗は続きます。
アゲアゲ界ではみ出しものだったアゲおっさんは、人間界でもはみ出しものでした。
理由はアゲおっさんの立ち振る舞いが悪いから。※アゲおっさんの昔話がどこまでホントかは別として。
人の世でも同じことが起きています。
何回転職しても職場に馴染めない。
何回恋愛・結婚しても別れてしまう。
何回転校して、いじめに遭ってしまう。
この場合、場所ではなく本人の考え方と立ち振る舞いにメスをいれるのです。
もう一つ。
ミドリさんがアゲおっさんに思った「ちょっと前の私と同じだ・・」
このくだりは共感です。
「アゲおっさんは昔の自分と同じことで悩んでいるんだな」と感じたわけですね。
ミドリさんは「変わりたいのに変われない」という悩みを抱いていました。
優しい母でありたいのに、怒ってしまう。
ヒステリーを起こしてしまう。叩いてしまう。
本を読んでもセラピーを受けても変われない。
その経験が、アゲおっさんの話に共鳴したのですね。
自身の弱みをさらけ出したら、ミドリさんが共感してくれた。
アゲおっさんはとてもとても嬉しかったのです。※アゲおっさんの昔話がどこまでホントかは別として。
前回の第25回で、ミドリさんは我が子に対し共感が出来るようになりました。
今回は、アゲおっさんに対して共感が出来たのです。
策士かつ一癖も二癖もあるアゲおっさん。
たまに登場しますので、アゲおっさんのアゲアゲ学もお楽しみください。