第43回 逃げにもルールがある

朝食

ミドリさん
おはよー。
ケイイチ
・・・。
ミドリさん
最近、返事してくれないんだよね。
ミドリさん
 ・・気まずいなぁ。
ケイイチ
・・・。

 

ギィ(ケーイチ立ち上がる)

ミドリさん
食べたらいっちゃった。
ユイ
・・・。
ユイ
母さん。
ミドリさん
なに?
ユイ
体調悪いんだ。学校休んでいい?
ミドリさん
わ、わかった。いいよ。
ユイ
部屋で寝てるね。
ミドリさん
・・・。また不登校になっちゃうかな。
ミドリさん
はぁ・・。こんなのいつまで続くんだろう・・・。
ミドリさん
・・・。
ミドリさん
あれ?
ミドリさん
ミサキ起きてこない・・・。

 

ミサキの部屋

ミドリさん
ミサキ、起きて?学校だよ?
ミサキ
行きたくない・・・。
ミドリさん
え!?
ミサキ
学校行きたくない・・・。
ミドリさん
 !!
ミドリさん
ミサキまで・・・
ミドリさん
あぁ、もうダメだ・・・。
ミドリさん
・・・。ウチはどうなっちゃんだろう。
ミドリさん
家族ってこうやって壊れてくのかな・・。
アゲアゲくん
ミドリさん。
アゲアゲくん
元気ないですね。
ミドリさん
・・ミサキがね。学校行きたくないって。
アゲアゲくん
・・・!
ミドリさん
ユイも行けない。ミサキも行けない。
ミドリさん
ケーイチは返事しない。
ミドリさん
もうダメだよ。
ミドリさん
今まで頑張ってきたけどさ。
ミドリさん
意味なかったんだよ。
アゲアゲくん
・・・疲れてますね。
ミドリさん
そうだね。
アゲアゲくん
「ストップシンキング」だと思います。
ミドリさん
「考えるな」ってこと?
アゲアゲくん
そうですね。
ミドリさん
分かった。ちょっと気晴らしするよ。
アゲアゲくん
そうですね。
ミドリさん
出かけてくるね。

 

カフェにて

ミドリさん
はぁ。私、親になってよかったのかな・・・
ミドリさん
・・いけない。マイナス思考になってる。
ミドリさん
ダメだ!
ミドリさん
息抜きに来たんだから!気持ち切り替えないと!

 

翌日

ミドリさん
おはよー。
ケイイチ
・・・。
ミドリさん
今日もケーイチは返事しない。

 

ギィ(ケーイチ立ち上がる)

ミドリさん
いっちゃった。
ミドリさん
ユイもミサキも休むって言うし・・・。
ミドリさん
そのうちケーイチも学校休むんじゃ・・・。
ミドリさん
はぁ・・・。
ミドリさん
・・・。
アゲアゲくん
ミドリさん・・・。
ミドリさん
ゴメンね、アゲアゲくん。
アゲアゲくん
 ・・?
ミドリさん
私、ダメな生徒だね。
アゲアゲくん
・・そんなことは!
ミドリさん
色々教えてくれたのに、無駄にしてゴメン。
ミドリさん
他のお母さんだったら、とっくにアゲ親になってるんでしょ?
アゲアゲくん
・・それはないと言い切れますよ。
ミドリさん
私、みんなを不幸にしてるよね。
アゲアゲくん
・・・。
アゲおっさん
どないしたんや?
アゲアゲくん
あ、アゲおっさん。
ミドリさん
・・・。
アゲアゲくん
こういう状況です。
アゲおっさん
なるほど。
アゲおっさん
・・・。
アゲおっさん
ミドリはん。今までにないくらい落ちこんでるな。
ミドリさん
・・・。
アゲおっさん
こんなときやるべきことは一つや。
アゲおっさん
アンタどうしたい?
ミドリさん
・・え?
アゲおっさん
今、どん底の気分になってるんやな。
アゲおっさん
それでや。
アゲおっさん
アンタは今、どうしたいねん?
ミドリさん
もう逃げたい・・・。
アゲおっさん
じゃあ逃げたらエエ。
ミドリさん
・・そんなの出来るわけないじゃない。
アゲアゲくん
いえ。
アゲアゲくん
僕も逃げることをオススメします。
ミドリさん
え!?
アゲアゲくん
僕もアゲおっさんも。
アゲアゲくん
いい加減な気持ちじゃないですよ。
ミドリさん
・・・うん。
アゲアゲくん
「逃げたい」と思ったんですね?
ミドリさん
・・・うん。でも。
アゲアゲくん
逃げていいんですよ。
ミドリさん
!?
アゲアゲくん
「逃げるという方向は決まり」でいいんです。
ミドリさん
・・・。
アゲアゲくん
あとは「どれだけ逃げるか」なんですよ。
ミドリさん
そんな無責任なこと出来ないよ・・・。
アゲおっさん
その責任感は幻やで。
ミドリさん
え!?
アゲおっさん
「私のせいでこの子らはダメになった」
アゲおっさん
そう思うてるやろ?
ミドリさん
うん。
アゲおっさん
「私がなんとかしないと」
アゲおっさん
そうも思うてるやろ。
ミドリさん
・・うん。
アゲおっさん
なんともならん。今までの苦労は無駄やった。
アゲおっさん
そんな気持ちと違うかな?
ミドリさん
・・うん。
アゲおっさん
安心せぇ。全部幻や。
ミドリさん
・・ホント?
アゲおっさん
アンタのせいやない。誰がやっても同じ結果になってたんや。
ミドリさん
・・・。私じゃなくてもこうなってた?
アゲおっさん
せやで。
アゲおっさん
でもそんなん証明でけへんやん?
アゲおっさん
時間巻き戻すのは不可能やからな。
アゲおっさん
「誰がやっても同じ結果」
アゲおっさん
これは悪い意味違うで?
アゲおっさん
今の苦悩はな。ストレス過多による思考の幻や。
ミドリさん
思考の幻・・・。
アゲおっさん
今のアンタはエナジー「0」。サゲサゲや。
アゲおっさん
サゲサゲは別名「頭脳のサゲサゲ」
アゲおっさん
下がりすぎるとな。頭脳が悪さしよんねん。
アゲおっさん
自分と子どもを客観視すんねん。
アゲおっさん
「意味がない」「つまらん人間や」そない思わせるんよ。
アゲアゲくん
今、そう思ってないですか?
ミドリさん
思ってる・・・。
アゲアゲくん
だ・か・ら
アゲアゲくん
逃げていいんですよ。
アゲおっさん
「ずっと子どもと向き合ってなアカン」そんなんもあらへんで。ブラック企業やがな。
ミドリさん
・・・。
ミドリさん
どうしよ・・。
アゲアゲくん
どうしたいですか?
ミドリさん
一人になりたいな・・。
アゲアゲくん
じゃあなりましょう!
アゲおっさん
どれくらい一人になりたいねん?
ミドリさん
え?
アゲおっさん
遠慮せずに言ってみ?
ミドリさん
2,3日。どこか遠いとこ行きたいよ。
アゲアゲくん
ではその方向で検討していきましょう。
ミドリさん
・・・。
ミドリさん
でも、私の母さんは手伝ってくれないよ?
アゲおっさん
そんなん言ってみんとわからんやん?
ミドリさん
絶対ムリ。
ミドリさん
「アナタが頑張らないで誰が頑張るの」
ミドリさん
「母さんはアナタのとき諦めなかったよ」
ミドリさん
そんなこと言ってくるに決まっている。
ミドリさん
余計怒られるよ。
アゲアゲくん
・・・。
アゲおっさん
・・・。
ミドリさん
旦那は単身赴任だし・・・。
アゲアゲくん
・・・。
アゲアゲくん
一日くらいなら僕らでなんとかならないですか?
アゲおっさん
 せやな。
アゲアゲくん
僕とアゲおっさんで出来る限りやりますよ。
アゲおっさん
今度、お好み焼きおごってや。
ミドリさん
え・・。
アゲアゲくん
もちろん、僕たちでは役不足かもしれません。
アゲアゲくん
友人に頼ってもいいし、旦那さん側のご両親に頼ってもいい。
アゲアゲくん
使えるものは使っていいんですよ。
アゲおっさん
やったらアカンのは悪意を持って人を利用すること。
アゲおっさん
そんな気持ちないやん?
ミドリさん
・・うん。
アゲおっさん
人はな。「持ちつ持たれつ」なんや。
アゲおっさん
困っているのに、助け合わんって。寂しいやん。
ミドリさん
・・・。
アゲおっさん
頼るんは悪いことやない。迷惑でもない。
アゲおっさん
・・最近の若い子らは、その辺苦手みたいやな。
アゲおっさん
ちょっと前までは助け合いなんて当たり前やってんで。
アゲアゲくん
これを機に練習しましょう。
アゲおっさん
せや。頼るも上手と下手があるんやで!
アゲアゲくん
「助けて」って僕らに言ってみてください。
ミドリさん
・・・。
ミドリさん
・・・助けて。
アゲアゲくん
喜んで♪
アゲおっさん
任せときー♪
ミドリさん
・・・。
アゲアゲくん
では、どう逃げますか
アゲおっさん
作戦会議やな。
アゲアゲくん
お家の方は僕らでなんとかします。
アゲアゲくん
羽を伸ばしてきてください。
ミドリさん
・・・ありがと。
アゲおっさん
条件あるで。
アゲアゲくん
そうそう。とーーっても大事なことです。
ミドリさん
・・?
アゲおっさん
これを守らんと、逃げた意味ないで。
アゲアゲくん
その通り。
ミドリさん
なに?
ミドリさん
・・!
アゲアゲくん
逃げた自分を責めたらね。逃げたことにならないんです。
アゲおっさん
逃げた意味ないやんか。
アゲアゲくん
手伝った僕らも報われません。
ミドリさん
そっか。そうだね。
アゲアゲくん
逃げるにもコツがあるんです。
アゲアゲくん
悪いパターン挙げましょう。
アゲアゲくん
リフレッシュの時間をもらった。
アゲアゲくん
休みながらも心安まってない。
アゲアゲくん
「明日から頑張らねば」と思いながら遊んでいる。
アゲアゲくん
休むことになったのを自分の落ち度と思う。
アゲアゲくん
休んでいる間も自分を責めている。
アゲアゲくん
休んだことになってないです。
ミドリさん
この前の私だね。
ミドリさん
「気持ち切り替えなくちゃ!」って気合い入れちゃったよ。
アゲアゲくん
逃げたご自分を責めていたのだと思います。
アゲおっさん
もっかい言うで?しつこいかもしれんけど・・。
アゲおっさん
誰がやっても結果は同じやってんで。
アゲおっさん
必然やってん。だから休むのも必然やねん。
ミドリさん
・・・。
アゲおっさん
「アンタのせい」言うヤツおるやろ?
ミドリさん
・・うん。いるね。
アゲおっさん
ミドリはんの場合は・・お母はんか?
ミドリさん
うん。
アゲおっさん
お母はんはな。アンタの事情何も知らんねん。
アゲおっさん
みんなそやで?
アゲおっさん
好き勝手言えるヤツはな。なーんも知らんねん。想像力ないねん。
ミドリさん
そうかも。
アゲおっさん
知る気ないから好き勝手言えるんや。
ミドリさん
あぁ、思い当たるよ。
アゲアゲくん
僕たちの言いたいこと伝わりましたか?
ミドリさん
・・・うん。ありがとう。
ミドリさん
素直に頼ればいいのかな。
アゲおっさん
せや。
アゲアゲくん
僕たちは元気になってほしいのです♪
ミドリさん
・・ありがとう。

 

休日終わって

アゲアゲくん
お帰りなさい。
ミドリさん
ただいま。
ミドリさん
ありがとう。リフレッシュしてきたよ。
アゲアゲくん
それは良かった。
ミドリさん
なんかね。休めたことも大きかったんだけど。
ミドリさん
二人が「何も気にせず休め」って言ってくれた。
ミドリさん
もうそのとき救われた気がする。
アゲアゲくん
それがエナジーの回復なんですね。
アゲアゲくん
エナジーはスマホの電池と一緒。
アゲアゲくん
「0」になったら、全てがマイナスに思えてきます。
アゲアゲくん
満タン「3」になれば、前向きになっていきます。
アゲアゲくん
逃げて収穫あったと思いませんか?
ミドリさん
え?
アゲアゲくん
逃げ方のコツが分かったでしょ。
ミドリさん
そうだね。
アゲアゲくん
次はもっと上手に逃げられますよ。
ミドリさん
うん。次はもっと早いと思う。
アゲアゲくん
また辛くなってもね。今回のことを思い出せばいいんです。
アゲアゲくん
「なんとかなる」と思えてきます。
ミドリさん
・・。そっか。なんとかなるか。
アゲアゲくん
無駄じゃなかったでしょ?
ミドリさん
・・・ゴメンナサイ。
アゲアゲくん
僕の話すのは心のアゲ親学!
アゲアゲくん
心がね。「逃げたい」と思ったら逃げましょう。
アゲアゲくん
そこから始まるんです。
ミドリさん
逃げてもいいんだね。
アゲアゲくん
はい!
アゲおっさん
ふっふっふ。
ミドリさん
アゲアゲくん
アゲおっさん
ワシは逃がさへんで。
ミドリさん
アゲおっさん
お好み焼きおごってや!
ミドリさん
・・・。
アゲアゲくん
・・・。えっと。
アゲアゲくん
一応言っておきますけど。
アゲアゲくん
コレ、アゲおっさんなりの励ましですからね。
ミドリさん
・・・ップ。分かってるよ。
アゲおっさん
がっはっは。エナジー上がると冗談も笑えるからな。
ミドリさん
・・・でもね。
アゲおっさん
!?
ミドリさん
雰囲気台なしよねー♪
アゲアゲくん
ホントですねー♪おっさん台なし!
アゲおっさん
・・・いけずやなぁ。

 

逃げるときのルール

学校は「逃げちゃダメ」と教えてきます。

「逃げていいんだ」と知らない人は多いのではないでしょうか。

 

逃げ方にも守るべきルールがあります。

逃げたいなら逃げていいんです。

三十六計逃げるにしかず。

逃げることで事態は好転していきます。

 

想像力のない人はアナタに好き勝手言います。

大丈夫です。

その人がアナタと同じ立場になったら、どうなると思いますか?

同じように「ギブアップ」と言うのです。

 

ルールは二つです。

一つは「そもそもが逃げていい」

 

もう一つ。

逃げた自分を責めない。

 

せっかく勇気を出して逃げたのに。

その自分を責めたら逃げたことにならない。

首を絞める縄を外したのに、新たな縄を装着することはありません。

 

あなたの思うことは本物です。

辛いと思ったら逃げましょう。

 

考えるべきは逃げ方。

「どれくらい逃げるか」の程度量。

 

アナタが決めていいものですよ。

迷わないで。