第61回 賢さは紙一重

電車にて移動中

ミドリさん
むー。
アゲアゲくん
浮かない表情ですね。
ミドリさん
イヤーな実家行きだからね。
アゲアゲくん
ご両親が苦手なんですよね。
ミドリさん
うん。
アゲアゲくん
なんだか緊張してませんか?それが心配。
ミドリさん
分かる?
ミドリさん
毎年、家族全員で正月帰省してたんだけどね。
ミドリさん
今年はケーイチとユイがいない。
アゲアゲくん
お留守番ですね。
ミドリさん
母さんたちに、何言われるか。
アゲアゲくん
そのままは言えない?
ミドリさん
言えないよー。ユイなんか不登校だよ?
ミドリさん
「不登校なんて甘えてる証拠!」とか言うに決まってるよ、
アゲアゲくん
なぜ学校休んではダメなのでしょうね。ブラック企業は辞めていいのにね。
ミドリさん
そんな理屈を分かってくれる親じゃないよー。
アゲアゲくん
なるほど。
アゲアゲくん
ウソも方便です。
アゲアゲくん
ごまかすのがベストでしょう。
ミドリさん
りょーかい!
アゲアゲくん
さて。そろそろ透明になっておきましょうか。アゲアゲチェーンジ。
ミドリさん
そうだね。説明するのめんどくさい。

ミドリさん・実家

ピンポーン♪

ミドリさん母
あらー。明けましておめでとう。
ミドリさん
おめでとう。
ミサキ
あめでとー。
ユウスケ
おめでとー。
ミドリさん母
良く来たわね。
ミドリさん母
ケーイチとユイは?
ミドリさん
ケーイチは受験勉強。
ミドリさん
ユイは体調崩しちゃって!
ミドリさん母
そうなの。まぁ入りなさい。
ミドリさん
・・・。
ミドリさん
セーフ。私グッジョブ!
ミドリさん母
はい。お年玉。
ミサキ
わーい。
ユウスケ
ありがとー。
ミドリさん母
いっぱい勉強してね。
ミドリさん
昔の自分を観るようだな。
ミドリさん母
ケーイチの受験はどうなの??
ミドリさん
S高校受けるって張り切っているよ。
ミドリさん母
偏差値高いトコにしたのね。良いことだわ。
ミドリさん
部活目当てでS高なんだけどね。言えない。
ミドリさん母
ユイもあと2年で受験ね。頑張ってるの?
ミドリさん
伸び伸びやってるよ。大丈夫。
ミドリさん
家で伸び伸びしてるんだけどね。言えない。
ミドリさん
父さんは?
ミドリさん母
さぁ。お正月から何をやってるんだか。

 

10分後

ミドリさん母
それでね。山本さん家の旦那さんがね。
ミドリさん
でたー。母さんの愚痴ラッシュ。
ミドリさん母
リストラにあったんだって。奥さんの気が悪いのよね。
ミドリさん
・・・。「気」ってなんだ?
ミドリさん母
同級生のミヤコちゃん、離婚したそうよ。
ミドリさん
え!?そうなの?
ミドリさん母
育ちが悪いのよ。ワガママだから離婚したのね。
ミドリさん
そうなんだ。人の不幸をなぜ笑う??

 

ガチャ(ミドリさんの父帰る)

ミドリさん
あ、父さん。
ミドリさん父
あぁ・・・・。

バタン父部屋に入る)

ミドリさん
なんかないんかいー!
ミドリさん
あー疲れる実家だなー。
ミドリさん母
それでねー。
ミドリさん
あぁ、帰りたい・・・。

夕方

ミドリさん
じゃあ、帰るね。
ミドリさん母
またいらっしゃい。
ミドリさん
う、うん。

帰りの電車

ミドリさん
つ、疲れた。がんばったね、私、
アゲアゲくん
おつかれさまでした。
ミドリさん
ご覧の通り、あれが私の両親です。
アゲアゲくん
ミドリさんのサガリ具合がスゴいですね。
ミドリさん
気力吸い取られる感じ。
アゲアゲくん
めちゃくちゃ頭使ってましたね。
ミドリさん
分かる?
アゲアゲくん
心が動いてなかったです。
アゲアゲくん
お父さん、全然出てこなかったですね。
ミドリさん
そうだね。何考えてるか分かんないんだよ。
アゲアゲくん
お父さんとお母さんの仲は良いのでしょうか?
ミドリさん
悪いよ。
アゲアゲくん
・・怖っ!
ミドリさん
父さんと母さんでね。綱引きしているの。
アゲアゲくん
綱引き?
ミドリさん
どっちが家の主導権を握るか。
ミドリさん
どっちが優れているか。
ミドリさん
どっちが子どもから支持されているか。
アゲアゲくん
その中にいては辛かったでしょう。
ミドリさん
「どっちの味方につけばいいの??」
ミドリさん
そんなことで悩んでたよ。
ミドリさん
これって当たり前じゃないんだよね?
アゲアゲくん
そうですね。
ミドリさん
でもさ。
ミドリさん
ウチの家って毒親なのかな??
アゲアゲくん
・・は?
ミドリさん
テレビで紹介されるような毒親とウチは違うと思うんだよ。
ミドリさん
虐待とか育児放棄はされてないし。
ミドリさん
進学させてもらったし、結婚もOKもらえたし。
アゲアゲくん
・・・えっと。
アゲアゲくん
もっとヒドい親がいるから、ウチは毒親じゃない。
アゲアゲくん
そう考えたのですか?
ミドリさん
たまに思っちゃうんだ。
ミドリさん
「こんなことで悩む私が悪いのか??」って。
アゲアゲくん
意味がないと思います。
ミドリさん
意味がない?
アゲアゲくん
毒親か否か。
アゲアゲくん
定義はミドリさんが決めることですよ。
ミドリさん
私が決めるの?
アゲアゲくん
そうです。
アゲアゲくん
頭脳ってね。スゴいのです。
ミドリさん
アゲアゲくん
どんな悪も正義にしてしまう。それが頭脳の賢さ。
アゲアゲくん
賢さがミドリさんを苦しめているのではないでしょうか。
ミドリさん
自分のクビを締めてるのかな??
アゲアゲくん
苦しいですか?
ミドリさん
苦しい。
アゲアゲくん
では緩めましょう
アゲアゲくん
誰が何と言おうとね。
アゲアゲくん
自分がイヤだと思ったらそれでいいのですよ。
ミドリさん
・・・。そんなこと言われたことないよ。
アゲアゲくん
気持ちを汲んでもらうこと少なかったのですね。
ミドリさん
うん。
アゲアゲくん
ミドリさんの好きな食べ物はなんですか?
ミドリさん
え?なに急に。
アゲアゲくん
お答えいただければと思います。
ミドリさん
ケーキとか甘い物だね。
アゲアゲくん
それはミドリさんが決めましたよね。
ミドリさん
うん。
アゲアゲくん
その感覚で決めてるのですよ。
ミドリさん
親のことも?
アゲアゲくん
それが生きるということです。
アゲアゲくん
こわーい事言っていいですか。
ミドリさん
なになに!?お手柔らかに!
アゲアゲくん
頭脳を使いすぎるとね。
アゲアゲくん
何も思わなくなります。
アゲアゲくん
好きなものが分からなくなります。
アゲアゲくん
それがサゲサゲ。
アゲアゲくん
賢さもほどほどにしておいてくださいね。
ミドリさん
覚えておきます・・・。
アゲアゲくん
お父さんとお母さんは戦いマインドをお持ちですね。

ミドリさん
そうだね。そう思うよ。
アゲアゲくん
もちろん家族とは戦う相手ではありません。
アゲアゲくん
戦いの先は崩壊なのです。
アゲアゲくん
なので戦いから抜けること。
ミドリさん
そのためには?
アゲアゲくん
争いから抜けることです。
ミドリさん
争い?
アゲアゲくん
今日のお母さんの話を聞いてて思いました。
アゲアゲくん
「この人は争っている人だな」と。
アゲアゲくん
一緒にいるとね。染まってしまうのですよ。
ミドリさん
母さんの考え方に?
アゲアゲくん
そうです。
アゲアゲくん
戦いの反対は調和です。
アゲアゲくん
家族は調和で成立します。
アゲアゲくん
戦いを抜けたら自然と調和になります。
アゲアゲくん
全く別の世界があるのですよ。
アゲアゲくん
僕はそれを知ってほしい。
ミドリさん
母さんたちはなんで戦いなのかな。
アゲアゲくん
心を置き忘れたのでしょう。
ミドリさん
私は大丈夫?
アゲアゲくん
それはもちろん。
ミドリさん
・・・。
ミドリさん
私が思うようにやったらね。
ミドリさん
父さんと母さんはもっといがみ合うと思う。
ミドリさん
それでもいいの?
アゲアゲくん
・・・。
アゲアゲくん
ミドリさんは”かすがい”をされているのですか。
ミドリさん
・・・。
ミドリさん
私が気にすることじゃないのか・・・。
アゲアゲくん
それでいいのですよ。
アゲアゲくん
付け加えるとしたら。
ミドリさん
アゲアゲくん
「どうしても」です。
ミドリさん
どうしても?
アゲアゲくん
はい。人にはね。「どうしても」があります。
アゲアゲくん
ミドリさんにとっての「どうしても」はなんでしょう。
ミドリさん
子どもたちのことだね。
アゲアゲくん
それならね。
アゲアゲくん
思うことをやりましょう。後悔しちゃダメですよ。
ミドリさん
物騒だね。
アゲアゲくん
でも真実なのです。
ミドリさん
・・まぁ。何も起らないかもしれないしね。
アゲアゲくん
考えるだけ無駄って思いませんか?
ミドリさん
・・・。ん?そうかも。
アゲアゲくん
今日は帰って良かったですね!
ミドリさん
え?
アゲアゲくん
「考えるだけ無駄かもしれない」
アゲアゲくん
これに気づけました。
ミドリさん
成長なのかな。
アゲアゲくん
はい。

 

 

「どうしても」

「自分の親を悪く言うのはおかしいよ」

そう言われたことないでしょうか。

 

毒親関連本にもとんでもないものもあります。

「小さいことなのに毒親だと騒ぎすぎ」

これらは頭脳のサゲサゲなのです。

 

「私が我慢すれば丸くおさまるんじゃないか?」

「私がヒドく思っているのかも?」

頭脳はそれを可能にしてしまいます。

 

苦しくはないでしょうか?

苦しさは心が「NO」と言っている証です。

どうすべきは心が知っていますから。

 

人には誰でも「どうしても」と思うことがあります。

「どうしてもイヤ」「どうしてもやってみたい」

ならそうするべきです。後悔しないですから。