第62回 分からないときは?

ミドリさん宅・テレビ鑑賞中

ミドリさん
そわそわ
ミドリさん
冬休みも今日で終わり。
ミドリさん
明日から三学期だ。
ユイ
あはは。
ミドリさん
ユイは現在不登校・・。
ユイ
あはは。
ミドリさん
・・・。楽しそうにしてるな。
ミドリさん
明日はどうするのかな。
ミドリさん
行くのかな。行かないのかな。
ミドリさん
冬休みで元気になった気もするけど・・・。
ユイ
あははー♪
ミドリさん
・・聞いてみようか。
ミドリさん
ねぇ?
ユイ
なに?
ミドリさん
明日から三学期だね。
ユイ
・・・・。
ミドリさん
学校行けそう?
ユイ
・・・。
ユイ
・・・。
ミドリさん
・・・。
ミドリさん
固まっちゃったー!?
ミドリさん
どーしよ?どーするの私!?
電話
プルルー♪プルルー♪
ミドリさん
あ、電話だ!ナイスタイミング!
ミドリさん
はいはい。あ、母さんなにー?
ユイ
・・・。

バタン!(ユイ部屋に入る)

ミドリさん
・・・。
ミドリさん
やってしまったかー!?
ミドリさん
・・・。
アゲおっさん
落ちこんでるなぁ。
ミドリさん
あ、アゲおっさん。
アゲおっさん
ユイちゃんのことか。見てたで。
ミドリさん
今日で冬休み終わりじゃない?
アゲおっさん
せやな。
ミドリさん
さっきまで元気だったんだよ。
アゲおっさん
せやな。
ミドリさん
「もう大丈夫なんじゃないか?」
ミドリさん
そう思って声かけたんだけどね。
ミドリさん
「学校行けそう?」って言ったら。
ミドリさん
空気凍った。部屋に籠もっちゃった。
ミドリさん
振り出しに戻った気分だよ・・・。
ミドリさん
何て言えば良かったのかなー!?
アゲおっさん
うーん。
アゲおっさん
まず落ち着こうか。
ミドリさん
そうか、そうだね。
アゲおっさん
ほれ、アタリメ。
ミドリさん
スルメ・・。センスないね。
アゲおっさん
噛んだら落ち着くで。
ミドリさん
え?そういう意味なのね。ありがと。
ミドリさん
はむ・・。
アゲおっさん
食べながら聞いてや。
アゲおっさん
不登校になって、明日から新学期。
アゲおっさん
心配なるんは当たり前やわ。
アゲおっさん
何か言いたくなるのも分かる。
ミドリさん
・・うん。
アゲおっさん
「母親の私がなんとかしないと!」
アゲおっさん
そない思うたんか?
ミドリさん
うん。
ミドリさん
・・・。私のせいじゃないかなって・・。
アゲおっさん
私のせい?
ミドリさん
私、良い母親じゃないから・・・。
アゲおっさん
・・・。
アゲおっさん
・・・。ワシはアンタのこと知ったんは最近や。
アゲおっさん
それでも分かることがある。
アゲおっさん
いっぱい悩んでるやん?
ミドリさん
・・うん。
アゲおっさん
悪い母親は悩むやろうか。
ミドリさん
え?
アゲおっさん
落ちこみもせぇへんやろ。
アゲおっさん
世の中おもろいコトいっぱいあるやん。テレビでもスマホでも何でもな。
アゲおっさん
そんなんしてへんやん。
アゲおっさん
足掻いてもがいて、やってるやん。
アゲおっさん
そんな母親が悪いなんて。ワシは思わんな。
ミドリさん
・・・うぅ。そうかな。
アゲおっさん
せやで。
アゲおっさん
泣くほど悩むんや。心が熱い証拠やで。
ミドリさん
・・・。ヒック
アゲおっさん
しばらく泣こか。付き合うで。

10分後

ミドリさん
ありがとう。落ち着いたよ。
アゲおっさん
何よりや。
ミドリさん
ユイ、どうしよ。何か言った方がいいかな。
アゲおっさん
何を言おう思うねん?
ミドリさん
「学校どうする?」って。
アゲおっさん
どんな反応返ってくると思う?
ミドリさん
「行く」って言うんじゃないかな。
アゲおっさん
行ってどうなるやろ?
ミドリさん
・・・。
ミドリさん
・・・。
ミドリさん
分からない。
アゲおっさん
じゃあどうしよ?
ミドリさん
私がユイに対して?
アゲおっさん
せやな。
ミドリさん
「行きなさい」って言うのは良くないかな?
アゲおっさん
なんでそう思ったん?
ミドリさん
「行け」って言われて、行って。苦しくて、辛くて。
ミドリさん
そうなったら、立ち直れないんじゃないかなって。
アゲおっさん
思いやりやな。
アゲおっさん
もう一つあるわ。
アゲおっさん
行くのも、行かんのもな。どっちも正解やねん。
ミドリさん
え?
アゲおっさん
大事なのは自分で選んだかどうかや。
アゲおっさん
ユイちゃんが自分で選んだのならな。
アゲおっさん
学校行くのも、行かんのも。どっちでも大丈夫なんやで。
ミドリさん
・・・。いつか行けるようになるの?
アゲおっさん
別の道かもしれん。でもなんとかなる。そういうもんや。
ミドリさん
無理矢理行かせたら?
アゲおっさん
自信なくすやろな。
ミドリさん
そうなんだ・・・。
アゲおっさん
不登校で悩んだらな。
アゲおっさん
子どもの選択を最優先にしたらエエで
ミドリさん
引っ張るのは良くない?
アゲおっさん
オススメせぇへんな。
ミドリさん
私は何もできないのかな・・・。
アゲおっさん
・・・。
アゲおっさん
落ちこんでいる人間がほしいのはな。
ミドリさん
なに?
アゲおっさん
「大丈夫!なんとかなるで!」
アゲおっさん
そんな落ち着く言葉や。
ミドリさん
落ち着く言葉・・・。
アゲおっさん
根拠なくてエエから。理屈どうでもええねん。
アゲおっさん
オカンがな。「大丈夫や!」そない言うてくれたら。
アゲおっさん
それだけで救われるんやで。
ミドリさん
・・・。
ミドリさん
ユイの部屋行ってくるよ。
アゲおっさん
そうか。
アゲおっさん
ミドリはん。
ミドリさん
なに?
アゲおっさん
大丈夫や。なんとかなるでぇ。
ミドリさん
うん。伝えてくるよ。
アゲおっさん
いってき

 

 

選んだ苦労は軽い

「親が子どもの責任を持つべきだ」そんな子育て論があります。

それはサゲ親学の理屈です。

 

「母親なんだから、なんとかしないさい」

「親のしつけが悪いからこうなった」

心ない言葉を言われるかもしれません。

 

大丈夫です。

正反対の理屈も存在しているのです。

 

「明日から新学期だ。どうしよう。分からない」

悩んだときは、子どもの選択を最優先してください。

 

選んだ苦労は軽くなります。

背負わされた苦労は重く感じます。

 

それだけの話ですが、これがとても重要ですから。

 

「親は何もすることがないのか?」と思われるかもしれません。

親とは最後の逃げ場です。

「大丈夫。私はあなたの味方だから」

そう伝えるのが何よりの救いになります。