第59回 距離ではなく

アゲアゲくん
スゴい行列ですねー!
ミドリさん
初詣の神社はこうなんだよ。
アゲアゲくん
神仏を信じている人がこんなに多いとは。うんうん。
ミドリさん
よくは分からないけど。
ミドリさん
クリスマスと同じだと思うよ、みんな。
アゲアゲくん
イベントのようなものですか。
ミドリさん
そうだね。
ユウスケ
きゃっきゃ。
ミドリさん
ゆーすけ。並ばないと。
ミサキ
タコ焼き食べたーい。
ミドリさん
お参り終わったらね。
アゲおっさん
ワシ、買たるで。
ミサキ
わーい。
ミドリさん
良かったね。
ミドリさん
・・・。はぁ。
ミドリさん
結局。
ミドリさん
ケーイチもユイも留守番になったか。中学生だしね。
ミドリさん
家族揃っての初詣記録。今年で途切れたなぁ。
ミドリさん
・・・。あれ。
ミドリさん
私はどうなっていくんだろ??
ミドリさん
最後は一人初詣かー!?
ミドリさん
あー寂しくなってきた。元旦そうそう。
ミサキ
お母さん、お金ー。
ミドリさん
おっといけない。はい。
アゲおっさん
ミドリはん、参拝のコツ覚えてるか。
ミドリさん
覚えてるよ。
ミドリさん
「お願い」じゃなくて「決意」するんだよね。
アゲおっさん
せや。神様に宣言するんや。
ミドリさん
りょうかい!

カランカラン!

パンパン!

ミドリさん
「今年こそ、私は変わります」
ミドリさん
「優しいお母さんになります」
ミドリさん
「ケーイチと仲良くなれるように。試験に合格できますように」
ミドリさん
「ユイが学校へ行けますように」
ミドリさん
・・・あれ?
ミドリさん
お願い事になっている??
ミドリさん
・・・。
ミドリさん
あ!長くなっちゃったね。行こうか。
アゲアゲくん
色々思うことがあったんですね。
ミドリさん
長くなっちゃった。
アゲアゲくん
良いお参りでしたよ。
ミドリさん
そう?欲張っちゃったけど。
アゲアゲくん
大丈夫、大丈夫。
ミサキ
たこ焼きー。
アゲおっさん
よっしゃ。任せとき。
ユウスケ
僕、焼き芋がいい。
アゲおっさん
ワシらで行ってくるわ。
ミドリさん
行ってらっしゃい。奢ってくれてありがとう。
ミドリさん
・・・。
ミドリさん
ねぇ?アゲアゲくん。
アゲアゲくん
なんでしょう。
ミドリさん
「大勢の人がいるのに私は孤独だな」
ミドリさん
並んでいる最中にね。そう思った。
アゲアゲくん
・・・。
ミドリさん
私、ずっと「寂しい」が続いているの。
ミドリさん
結婚して家族を持てば大丈夫。孤独じゃなくなる。
ミドリさん
そう思っていたけど・・。
ミドリさん
小さい頃と大して変わってないと思う。
ミドリさん
これが普通なのかな?
アゲアゲくん
普通といえば普通ですが・・。
ミドリさん
やっぱり。
アゲアゲくん
いえいえ、人数が多いという意味で普通なだけ。
アゲアゲくん
大丈夫です。ミドリさんは変われますよ。
ミドリさん
ホント?
アゲアゲくん
「家族がいるけど孤独を感じる」
アゲアゲくん
こういう人は多くいます。
ミドリさん
私だけじゃないんだ。
アゲアゲくん
そうですね。
アゲアゲくん
大事なのは距離じゃないのですよ。
ミドリさん
一人でも寂しさを感じない人いるの?
アゲアゲくん
はい。
ミドリさん
私もそうなれる?
アゲアゲくん
なれます。
アゲアゲくん
「心の繋がり」ってあるんですよ。
ミドリさん
そんなのキレイ事だと思っているけど・・。
アゲアゲくん
いえいえ実在します。UFOじゃない。
ミドリさん
私も心で繋がれるようになるの?
アゲアゲくん
はい。
アゲアゲくん
例えおばあちゃんになって、一人暮らしをしたとしても。
アゲアゲくん
「寂しくない」と思えることは可能なのですよ。
ミドリさん
・・・。今まで初詣はね。
ミドリさん
必ず家族全員一緒だったんだ。
ミドリさん
今年から、ケーイチとユイは別行動になった。
ミドリさん
私ね、これだけでもう辛いんだよ。
ミドリさん
引き剥がされていくような感じがするんだ。
アゲアゲくん
寂しさと不安を抱いているのですね?
ミドリさん
うん。
アゲアゲくん
大丈夫ですよ。
アゲアゲくん
例え寝たきりのおばあちゃんでもね。
アゲアゲくん
「私は幸せだ。ありがとう」
アゲアゲくん
そんな気持ちを持てるのです。
ミドリさん
信じられない話だな。
アゲアゲくん
人間の不思議ですね。
アゲアゲくん
手放すことが大事ですよ。
ミドリさん
手放す?
アゲアゲくん
牧場で例えましょうか。
アゲアゲくん
寂しさを感じるとね。牧場を狭くしてしまいがちです。
ミドリさん
手許に置いておきたいんだよね。
アゲアゲくん
子どもを育てるにはね。
アゲアゲくん
牧場の柵はめいっぱい広くしておくのです。
アゲアゲくん
「もう柵から出たいんだ」
アゲアゲくん
成長すると「外へ出てみたい」と子どもは言い出します。
アゲアゲくん
それは良いことなんです。
アゲアゲくん
笑顔で送ってあげましょう。
ミドリさん
・・・。
アゲアゲくん
しかめっつらで見送るとね。帰ってこない。
アゲアゲくん
笑顔で見送ればね。戻ってきます。
アゲアゲくん
想像してみてください。
アゲアゲくん
笑顔で見送ったあと。
アゲアゲくん
ちゃーんと帰ってきたケーイチ君やユイちゃんの姿。
アゲアゲくん
その表情は笑っています。
アゲアゲくん
笑顔の子どもたちを迎えるミドリさん。
アゲアゲくん
そのときね。
アゲアゲくん
「一人じゃないな」って思えるんですよ。
ミドリさん
・・・。
ミドリさん
私は柵を狭くしていたのかもしれないね。
アゲアゲくん
今度は広げられるようになれますよ。
ミドリさん
そうかなー。自信ないけど。
アゲアゲくん
大丈夫。
アゲアゲくん
こうやって僕と話していることが成長なのですよ。
ミドリさん
私は変われてるの?
アゲアゲくん
バッチリです。
アゲアゲくん
山登りと同じです。
アゲアゲくん
登っている最中は高さが分からない。
アゲアゲくん
「頂上に辿りつけるんだろうか」と不安になる。
アゲアゲくん
それでも足を動かすことです。
アゲアゲくん
頂上にたどり着いてますよ。
ミドリさん
そう・・だと思いたい。
アゲアゲくん
今日の参拝で決意したこと。
アゲアゲくん
僕とこうやってお話ししていること。
アゲアゲくん
これらが一歩なのですよ。
ミドリさん
そっか。
ミサキ
お母さんー。
ミドリさん
あ、買ってきたのね。
ミサキ
はい。
ミドリさん
私に?ありがとう。
ミサキ
アゲアゲくんにも。
アゲアゲくん
わぉ。カラアゲ!
ミドリさん
・・・。
ミドリさん
ケーイチとユイにもお土産買って帰ろうか。
アゲアゲくん
いいですね。
ミドリさん
甘いのが好きだから、ベビーカステラがいいかな。
アゲアゲくん
ミドリさん。
ミドリさん
なに?
アゲアゲくん
今ね、お土産を閃いたでしょ。
ミドリさん
そうだね。
アゲアゲくん
大丈夫。ちゃんと登れていますよ。
ミドリさん
・・・。そうか、そうなんだね。
ミドリさん
焼き芋も買うか!
アゲアゲくん
買いましょう。
アゲおっさん
がっはっは。景気ええな。その意気や!

 

強がりではなく

アゲ親学を学んでいる方で。

「一人でご飯食べにいけるようになった」

「今度、一人旅するんです」

そうおっしゃる方がいます。

 

超絶分かりにくい話をしますが「心」の問題なんです。

感じることが沢山できれば、あらゆる物事から嬉しさを感じることが出来ます。

 

この世に自分に嬉しさを感じる人がいる。

会いに来てくれる人がいる。

 

こう思えたとき、人は繋がりを感じます。

 

心を通わせたか、です。

 

コツは放牧です。

牧場の柵はなるべく広く広く、どこまでもいけるように。

 

「外へ出てみたいんだ」

子どもがそう言ってきたら、心良く送ってあげましょう。

 

笑顔で送ってくれたことを子は必ず覚えています。

いつか帰ってきます。

そのときアナタは寂しくなくなるのです。