第48回　鑑識眼

～年末・商店街～

ミドリさん
もうすぐクリスマスだねー。
アゲおっさん
ワシは有馬記念やけどな。
ミドリさん
アリマキネン？
アゲおっさん
競馬や、競馬。
ミドリさん
夢がないなぁ。
アゲおっさん
めっちゃ夢あるやん。
ミドリさん
競馬の何が楽しいのよ。
アゲおっさん
ドラマあるで。
ミドリさん
お馬さんに？
アゲおっさん
せや。
ミドリさん
うーん。そういうものなのか
課長
やぁ。ミドリ君じゃないか。
ミドリさん
あ！課長！こんなとこで奇遇ですね。
課長
キミも買物かね。
ミドリさん
そうなんです。課長もですか。

～10分後～

先生
では、この辺で。
ミドリさん
はい。また。
ミドリさん
・・。ゴメンね、話し込んじゃって。
アゲおっさん
ええけどミドリはん。
アゲおっさん
さっきのヤツ嫌いやろ？
ミドリさん
え！？なんで分かるの？
アゲおっさん
普段のアンタを見てたら分かるて。
ミドリさん
そっか。正解。ここだけの話だけどね。大嫌い。
アゲおっさん
せやろうな。
ミドリさん
人はね。嫌いな人とも付き合わなきゃいけないから。
アゲおっさん
まーせやけどやなぁ。
スマホ
プルルー♪プルルー♪
ミドリさん
あ、母さんからだ。もしもし？
ミドリさん
 え？ホント。ありがとう。楽しみにしてるよ。じゃあね。
アゲおっさん
アンタ、お母はん苦手やなかったっけ？？
ミドリさん
え？あぁ、そうだよ。
ミドリさん
人付き合いのコツだよ、これは。
アゲおっさん
うーん。
アゲおっさん
ミドリはん気づいてるか？
ミドリさん
なにを？
アゲおっさん
演技することに慣れきってへんか？
ミドリさん
え！？
アゲおっさん
演技するんはな。辛いことなんやで。
ミドリさん
そんなおおげさな。
アゲおっさん
おおげさちゃうって。
アゲおっさん
アンタのためだけやない。
アゲおっさん
子どもらのためにもなるから言うてんねん。
ミドリさん
え！？
アゲおっさん
よー聞いてや。
アゲおっさん
嬉しさのない演技は辛いもんやで。
アゲおっさん
そこを理解せんとな。
アゲおっさん
子どもにも演技させてまうねん。
ミドリさん
えぇ！？
アゲおっさん
子育ては、2通りあるねん。
アゲおっさん
一つはアゲ親。もう一つはサゲ親。
アゲおっさん
サゲ親はな。
アゲおっさん
「私の理想像になってね」って子どもに言うてまうねん。
アゲおっさん
自分自身が演技してるから、つい言うてまうねんな。
アゲおっさん
でも、それってお互い辛いやん。
ミドリさん
アゲ親はどうするの？
アゲおっさん
「演技するのは辛い」
アゲおっさん
そない思うてる。その上で演技する。
ミドリさん
必要に応じて・・か。
アゲおっさん
世の中はサゲサゲや。
アゲおっさん
「演技させてたら、それが当たり前になる」そない教育多いやん。
ミドリさん
学校とかはそうだね。
アゲおっさん
それ違うから。真似せんでエエんやで。
アゲおっさん
褒めて、怒って、励まして。
アゲおっさん
子どもはやるやろ。
アゲおっさん
でもそれって演技やねんな。演技が本物になることまずないで。
ミドリさん
・・・。あぁ、私は演技させてたかもしれない。
アゲおっさん
アンタの事情も分かるねん。
アゲおっさん
「演技して生きるしか道なかった」
アゲおっさん
そうなんやろ？
ミドリさん
・・・。うん。
アゲおっさん
ただな。もうアンタは大人になったんや。
アゲおっさん
「嫌いな相手とも付き合わないといけない」
アゲおっさん
これは事実や。
アゲおっさん
でもな。
アゲおっさん
「演技して生きるのは辛い」
アゲおっさん
これも事実なんや。
ミドリさん
どっちが正しいのかな？
アゲおっさん
アンタが決めたらエエねん。
ミドリさん
私が決めていい・・。
アゲおっさん
演技するのは常識とちゃうからな。
アゲおっさん
演技するのは辛い。そない思うて正直に生きるヤツもおる。
アゲおっさん
演技やめるとな。ほんまもんが分かるねん。
ミドリさん
ほんまもん？
アゲおっさん
何がニセモノで何が本物分かるねん。
ミドリさん
鑑定士みたいだね。
アゲおっさん
「コイツとは仲良くしよう」
アゲおっさん
「コイツはこれくらいでええわ」
アゲおっさん
そんな鑑定が出来るから。オススメやねん。
ミドリさん
「演技は辛いな」と思うことで？
アゲおっさん
せや。
アゲおっさん
実際、辛いやろ？
ミドリさん
・・・。
ミドリさん
・・・辛いね。
アゲおっさん
よっしゃ。今、階段一つ上がったわ。
ミドリさん
・・そうなのかな！？
アゲおっさん
覚えとき。
アゲおっさん
優しさもえげつなさも必要やからな。
アゲおっさん
優しい一辺倒の人間に、親にならんでエエから。
アゲおっさん
嫌いな相手おるやろ？
アゲおっさん
そいつに優しくせんでエエて。適当でエエねん。
アゲおっさん
なんでやと思う？
ミドリさん
辛いから。
アゲおっさん
大正解や。
アゲおっさん
好きなヤツおるやん？
アゲおっさん
そいつにはめちゃくちゃ優しくしたらエエ。
アゲおっさん
なんでや？
ミドリさん
嬉しいから？
アゲおっさん
大正解や。
ミドリさん
そんなんでいいの？
アゲおっさん
そんなんでエエねんで。

 

演技は辛いもの

人は演技をします。

 

アゲ親も演技します。

ただ「演技は辛いよね」と思っています。

 

演じるのをやめると鑑識眼を持つことができます。

これは本物、これはニセモノと見分けがついていきます。

 

大人になると、この鑑識眼はとても役に立ちます。

あれこれ言ってしまうと、子どもは演技をしてしまいます。

「辛い」と思うなら、しなくても、させなくても大丈夫ですから。