第41回 持ちつ持たれつ

ケイイチ
いただきますー。
アゲおっさん
いただくでー♪
アゲおっさん
はふ・・ホンマ・・・はふ・・ミドリはんの・・・はふ・・飯は・・・はふ・・絶品やな!
ミドリさん
喜んでくれると嬉しいなぁ。
ケイイチ
母さん、おかわり。
ミドリさん
はいはい。
ユイ
母さんお弁当ー!
ミドリさん
はいはい!これ!
ミサキ
いってきまーす。
ミドリさん
はい。いってらっしゃい。

 

その日の夕方

ミサキ
ただいまー。
ミドリさん
お帰り。
ミサキ
お母さん、これ!
ミドリさん
なに?このプリント。
ミドリさん
遠足か。
ミドリさん
なになに?持ちものはお弁当、おやつ、水筒、雨具、持物には名前を必ずつけて・・・。
ミドリさん
分かった。準備しておくよ。
ミサキ
わーい。
ケイイチ
ただいまー。
ケイイチ
母さんお願いあるんだ。
ミドリさん
どうしたの?
ケイイチ
来月さ、バスケの試合があるんだよ。
ケイイチ
会場遠くて。車で送ってくれないかな?
ミドリさん
あぁ、分かった。いいよ。
ケイイチ
友達も一緒でいい?
ミドリさん
うん。ついでだもんね。
ケイイチ
ありがとう!
ミドリさん
・・・。

 

課長
ミドリくん。
ミドリさん
はい。課長?
課長
月末までにこの書類ヨロシク。
ミドリさん
え!?急に?
課長
キミ、優秀だから。信頼して任せているんだよ。
ミドリさん
は、はい・・・。
ミドリさん
あ、頭痛くなってきた・・・。

 

~翌朝~

ケイイチ
いただきますー。
アゲおっさん
いただくでー♪
ミドリさん
・・・。
アゲおっさん
ウマー♪
ミドリさん
・・・。
アゲおっさん
ミドリはんおかわり!
ミドリさん
はい。
ユイ
母さんお弁当ー!
ミドリさん
はい。
いってきまーす。
ミドリさん
はい。
ミドリさん
・・・はぁ。楽しくないなぁ。仕事いくか。

 

夕方

ミドリさん
ただいまー。仕事疲れたー。
ミドリさん
あー。めまいがする・・・。
アゲおっさん
とったでー!!
ミドリさん
アゲおっさん
がっははは!さすがワシ!天才やぁ!天才ギャンブラーやぁ!
ミドリさん
・・・。
ミドリさん
ご飯つくろう・・。
アゲおっさん
お!ミドリはん!おかえり!
ミドリさん
あ、ただいまー。
アゲおっさん
なんや!ヘコんでるんかぁ!
ミドリさん
がさつ・・・。
ミドリさん
元気だから。
アゲおっさん
・・・。
アゲおっさん
アンタ嘘つきやなぁ。
ミドリさん
ぐさっ
ミドリさん
うっさいわね!この遊び人が!
アゲおっさん
・・・。
ミドリさん
・・・あ、ゴメン。
アゲおっさん
ええで。
アゲおっさん
ワシ遊び人やしな。
ミドリさん
・・・。
アゲおっさん
なんや大分まいってるやん?
アゲおっさん
話してみ?聞いたるで。今、機嫌エエねん。

 

ミドリさん
・・というわけで。仕事に家事に大ピンチで。
アゲおっさん
なるほどなぁ。
アゲおっさん
原因はハッキリしてるんちゃうの?
ミドリさん
やること多過ぎなんだよね。
アゲおっさん
せやな。
アゲおっさん
遠足の準備に、試合の送迎に、仕事か。
ミドリさん
うん。
アゲおっさん
全部やるつもりか?
ミドリさん
うん。
アゲおっさん
なんでや?
ミドリさん
え!?
ミドリさん
だって私の仕事だし。
アゲおっさん
「務めは全うせねば」ちゅうことか?
ミドリさん
そうだね。
アゲおっさん
・・・。
アゲおっさん
つまらんな。
ミドリさん
はぁ?
アゲおっさん
アンタおもろない。
ミドリさん
何を言ってるの?
アゲおっさん
優しいオカンになりたいんやろ?
ミドリさん
うん。
アゲおっさん
いわゆる毒親になりたくないんやろ?
ミドリさん
そうだね。私は私の母さんみたくなりたくない。
アゲおっさん
ハッキリいうで。
アゲおっさん
今のアンタ、毒親まっしぐらやで。
ミドリさん
えぇ!?
アゲおっさん
さっきワシに悪態ついたやろ?
ミドリさん
うん。
アゲおっさん
最近、子ども可愛くないやろ?
ミドリさん
・・・うん。
アゲおっさん
「なんで親になったんやろう」
アゲおっさん
「どこで間違ったんやろう」
アゲおっさん
そんな自己嫌悪続いてるやろ?
ミドリさん
・・・うん。
アゲおっさん
それはな。「辛い」いう気持ちを押し殺してるからやねん。
ミドリさん
・・・。
アゲおっさん
よー聞いてや。
アゲおっさん
辛いときは「辛い」言うてエエんやで?
ミドリさん
でも私、良い母親でいたいから・・・。
アゲおっさん
ちゃうねん。
アゲおっさん
アンタの「優しい親でいたい」その想いはホンモノや。
アゲおっさん
そういうことちゃうねん。
アゲおっさん
頑張って弁当つくる!
アゲおっさん
子どもの送迎する!
アゲおっさん
優しいオカンやな
アゲおっさん
ただな。
アゲおっさん
優しさにはな。「余裕がある場合に限る」ちゅう但し書きがあるんやで?

 

※但しアナタが元気な場合に限ります

 

アゲおっさん
余裕ないのに優しくしたらアカンのや。
アゲおっさん
嬉しないねん。
ミドリさん
え!?
アゲおっさん
アゲ親とサゲ親(毒親)の違いはマインドや。
アゲおっさん
嬉しいことをやるのがアゲ親。
アゲおっさん
正しいことやるのがサゲ親。
アゲおっさん
余裕がないときに、優しくしてもな。喜ばれへんねん。
ミドリさん
私が喜べない?
アゲおっさん
せや。
アゲおっさん
親切、優しさ、勤勉、努力。エエもんや。
アゲおっさん
自分の人生良くするのは、優しさと思いやりや。
アゲおっさん
でもな。余裕ないときにやったらアカン。
アゲおっさん
なぜか。
アゲおっさん
やっても嬉しくないからや。
アゲおっさん
やればやるほどな。
アゲおっさん
自分の人生呪いたなってまうんや。
ミドリさん
あぁ!
ミドリさん
うん。今朝、ご飯褒められても嬉しくなかったよ。
アゲおっさん
せや。余裕がないと喜ばれへんのや。
アゲおっさん
アゲ親は優しくすることに喜びを感じ取る。
アゲおっさん
サゲ親は優しくすることに疲れを感じる。
アゲおっさん
この差はなにか。
アゲおっさん
余裕があるか、ないか、や。
ミドリさん
そうかもしれない!
アゲおっさん
もっかい言うで?
アゲおっさん
辛いときは「辛い」言うてエエんや。
アゲおっさん
なーんにも悪いことやない。
アゲおっさん
むしろ「辛い」言うことで道は開けるんや。
ミドリさん
・・・。
ミドリさん
私の場合で言えば?
アゲおっさん
みんなおる前で「今、辛い。ピンチやねん」って言えばエエねん。
ミドリさん
えぇ?そんなの母親失格だよー。
アゲおっさん
ちゃうて。ちゃうちゃう。
アゲおっさん
あんな。人は持ちつ持たれつや。
アゲおっさん
困ったときはお互い様。親子も一緒。
アゲおっさん
親はな。弱いとこ見せてエエんよ。
ミドリさん
そうか。アゲ親は弱さを見せるの?
アゲおっさん
せや。人にもよるけど敢えて見せるヤツもおるな。
アゲおっさん
完璧な親なんておもろないで?
ミドリさん
そんな面白さだなんて・・・。
アゲおっさん
結構大事なんやけどな。人によるか。
アゲおっさん
親子はチームやねん。
アゲおっさん
親も子も、弱音吐いてエエ。
アゲおっさん
いっぺん、子どもらの前で吐いてみ?
ミドリさん
うん。

 

その日の夜

ミドリさん
あのさー。みんな聞いてくれる?
ケイイチ
ユイ
ミサキ
ミドリさん
母さんさ、今仕事ピンチなんだよ。
ミドリさん
頭痛くて、めまいもしてて・・
ケイイチ
・・!
ミドリさん
いや、たいしたことないんだけどね。
ミドリさん
ちょっと助けてくれると嬉しいんだけどな・・・。
ケイイチ
来月の試合、電車でいくよ!
ミドリさん
ホント?ゴメンね。
ユイ
ミサキの遠足準備手伝うよ?
ミドリさん
ほ、ほんと?
ミサキ
ミサキ我慢するー!
ユイ
いいって。
ミドリさん
あぁ・・嬉しい・・・。

 

翌朝

ケイイチ
いただきます
ミドリさん
はい。どうぞ!
ユイ
母さんお弁当!
ミドリさん
出来てるよー!
ミサキ
いってきまーす!
ミドリさん
いってらっしゃいー。
ミドリさん
ふぅ。
アゲおっさん
どや。言ってみるもんやろ。
ミドリさん
上の子が中学生で良かったよ。
アゲおっさん
何歳でも頼ってもエエんやで?
ミドリさん
えぇ??
アゲおっさん
もちろん中学生や高校生の方が頼りになるわな。
アゲおっさん
例えば3歳なら3歳なりに。頼れることあるんちゃう?
ミドリさん
あぁ、そっか。
アゲおっさん
親に頼られるのも嬉しいもんや。
アゲおっさん
あんま気張らずにな。「辛い」いいや。
ミドリさん
「親子はチーム」って感覚分かったよ。
アゲおっさん
上出来や。
アゲおっさん
あとは御礼やな。
アゲおっさん
前向きな優しさはな。ありがとう」言われただけで報われるから。
アゲおっさん
 あの子らに言ってあげ。喜ぶで。
アゲおっさん
今やったらめっちゃエエ「ありがとう」言えるやろ。
ミドリさん
うん。分かったよ。
ミドリさん
・・・。
ミドリさん
アゲおっさん!
アゲおっさん
ミドリさん
ありがとう。
アゲおっさん
・・・!照れるやん。

 

親子は対等で

アゲ親は「親子・家族はチームだ」という意識があります。

親が主将で仕切ってはいますが、エライわけでもない。

 

毒親で「戦いの思考」を持っている人がいます。

親子、家族であっても「どちらが上か」を気にして、張り合う関係です。

 

親子は対等です。

人間関係は持ちつ持たれつです。

 

赤ちゃんのときは、親がめいいっぱい荷物を持ちます。

成長するにつれ、荷物は分けていく。

持てるものはもってもらう。

ピンチなら「ピンチだ」と言う。

 

親がその態度であれば、子どもも言いやすい。

 

辛いときは辛いといってもいいんです。

子に頼るのも悪くないです。

 

「頭痛がする」「めまいがある」など身体的なSOSがあったら尚更ですよ。

頼られて誇らしい気持ちになる子もいるでしょう。

 

助けてもらったら「ありがとう」と御礼を言ってあげてください。

とても喜んでくれます。

 

あなたとお子さんは「家族」という一体感を味わうハズです。

辛いときは「辛い」と言いましょう。