第68回 道はいくらでも

成人の日・市民ホール前

アゲアゲくん
ミドリさん、ミドリさん。
ミドリさん
なあに?
アゲアゲくん
着物の女性がいっぱいいますね!
ミドリさん
晴れ着って言うんだよ。
アゲアゲくん
今日は晴れ着の日なのですか?
ミドリさん
違うよ。成人式だよ。
アゲアゲくん
成人式?
ミドリさん
20歳になったら大人になるんだよ。
アゲアゲくん
大人とは年齢なのですね。うーむ。
ミドリさん
法律上は20歳で大人なんだよ。
アゲアゲくん
なるほど。
アゲアゲくん
みんな嬉しそうでいいですね!
ミドリさん
成人式なんて遥か昔だなぁ。
アゲアゲくん
ミドリさんも着物を着たのですね!
ミドリさん
着物っていうか、晴れ着ね。
ミドリさん
成人式ってさ。
ミドリさん
良い思い出が一つあって。
アゲアゲくん
ほう。
ミドリさん
私の父さんってね。超ケチなの。
アゲアゲくん
ふむふむ。
ミドリさん
晴れ着を「無駄だ」って言い出して。
ミドリさん
「着たければ自分で払え」って。
アゲアゲくん
アイタタ、ですね。
ミドリさん
どうしても着たかったからさ。バイトしたんだよ。
アゲアゲくん
なんと!
ミドリさん
そしたらさ。
ミドリさん
母さんが味方になってくれて。
ミドリさん
お金出してくれたんだよ。
アゲアゲくん
おぉ。
ミドリさん
おかげで成人式は楽しかったんだ。
ミドリさん
あの日は母さんに感謝したなぁ。
アゲアゲくん
聞けて良かったです。
ミドリさん
え?
アゲアゲくん
ミドリさん、お母さんのこと苦手ですよね。
ミドリさん
うん。毒親だと思うよ。
アゲアゲくん
でも縁を切ったりしない。
ミドリさん
そうだね。
アゲアゲくん
「なんでだろう」と思っていたのですが。
アゲアゲくん
良い思い出があるのですね。
ミドリさん
そうなんだ。
アゲアゲくん
お父さんに対しては?
ミドリさん
ないね。
アゲアゲくん
ハッキリしてますね。
ミドリさん
父さんはピンキリで理解不能なんだよ。
ミドリさん
成人式にスーツ着ていけっていうんだよ。
ミドリさん
お金ないなら分かるけどさー。
アゲアゲくん
なんで出してくれなかったんでしょうね。
ミドリさん
合理主義の塊なんだよ。
ミドリさん
家族で外食行くとするじゃない?
ミドリさん
「何円得だからこれを注文しろ」
ミドリさん
「お子様ランチはぼったくりだ。注文するな」とか。
ミドリさん
子どもの頃はさ。「そういうものなんだ」と思ってたけど。
ミドリさん
今は分かるよ。あれはないね。
アゲアゲくん
なるほど。
ミドリさん
うん。
アゲアゲくん
お母さんの方が話は通じるんですね。
ミドリさん
母さんは世間体が命なんだよ。
ミドリさん
晴れ着もさ。
ミドリさん
「スーツで参加したら近所の人に笑われる」
ミドリさん
そんな世間体だったのかもしれないよ。
ミドリさん
でもね。私は世間体の方がまだ理解できるよ。
アゲアゲくん
そうかもしれないですね。
ミドリさん
でしょ。
ミドリさん
ちょっと休もうか。
アゲアゲくん
いいですね。
ミドリさん
私、モンブランで。
アゲアゲくん
僕は苺のケーキを!
かしこまりました。
ミドリさん
さっきの続き話していい?
アゲアゲくん
どうぞ!
ミドリさん
父さんとは関わりたくない。
ミドリさん
でも母さんとは悩むとこあるんだ。
ミドリさん
離れた方がいいんだろうけどね。
アゲアゲくん
嫌いになりきれないのでしょうか。
ミドリさん
なんだろう。仲良くしたいとは思ってる。
アゲアゲくん
良い思い出もありますからね。
ミドリさん
そうなんだよね。
アゲアゲくん
「あの頃に戻りたい」という気持ちでしょうか。
ミドリさん
そうだね。諦めたくないっていうか。
アゲアゲくん
「もういいや」とは思えない?
ミドリさん
そう、それ。
アゲアゲくん
なるほど。
ミドリさん
でもアゲアゲくんに会って分かったんだ。
ミドリさん
私のイライラや衝動って要はストレスなんだよね。
アゲアゲくん
そう言えますね。
ミドリさん
「縁を切るべきなんじゃないか」
ミドリさん
そう思う自分とね。
ミドリさん
「切りたくない」と思う自分もいるんだよ。
ミドリさん
矛盾だよね。おかしいかな?
アゲアゲくん
いえいえ。そういうものですよ。
ミドリさん
間違ってる?
アゲアゲくん
それもないです!
ミドリさん
子どもたちのために切った方がいい?
アゲアゲくん
自分のために切りましょう!切るならね!
ミドリさん
んー。安心したけど・・・。
ミドリさん
んーー。これでいいのかー?
アゲアゲくん
大丈夫ですよ。今のミドリさん悪くないです。
ミドリさん
そうなのかな?
アゲアゲくん
回り道だったとしてもね。
アゲアゲくん
それも意味あることなのですよ。
ミドリさん
・・・。
ミドリさん
アゲアゲくん、私に遠慮してない?
アゲアゲくん
は?
ミドリさん
遠慮ならしなくていいよ。
ミドリさん
私、自分で決めるのが苦手なの。
ミドリさん
恥ずかしい話なんだけどさ。
ミドリさん
「こうしなさい!」と決められた方が楽というか・・。
アゲアゲくん
僕に決めてほしいのですか??
ミドリさん
いや、ほら。アゲアゲくん何でも分かってる感じだから。
アゲアゲくん
僕にも分からないことありますよ。
ミドリさん
なに?
アゲアゲくん
ミドリさんの幸せのかたちですよ。
ミドリさん
私の幸せ??
アゲアゲくん
そう。
アゲアゲくん
アゲ親になるにはね。縁を切った方が早いですね。
ミドリさん
やっぱり??
アゲアゲくん
でもね。「もういいや」って思えないんでしょ?
ミドリさん
思えないね。
アゲアゲくん
ならもうちょっと悩んでほしいのですよ。
ミドリさん
・・・。
アゲアゲくん
僕はミドリさんに幸せになってほしいのです。
アゲアゲくん
スッパリ切るのが幸せかもしれない。
アゲアゲくん
関係を模索するのが、幸せに繋がるかもしれない。
アゲアゲくん
分かるまで悩んでほしいのですよ。
ミドリさん
分かるときが来るのかな?
アゲアゲくん
来ますよ。
ミドリさん
・・・。
アゲアゲくん
今日の成人式のお話。聞けてホント良かったんです。
アゲアゲくん
ためらう理由が分かりました。
ミドリさん
あの・・。
アゲアゲくん
なんでしょう。
ミドリさん
縁を切らないでアゲ親になることも出来るの?
アゲアゲくん
出来ますよ。
アゲアゲくん
アゲ親になってほしいのは変わらないですが。
アゲアゲくん
早いか、ゆっくりかはミドリさん次第。
アゲアゲくん
僕は横を歩くだけ。
アゲアゲくん
いくらでも待ちますから。
ミドリさん
ありがとう。
ミドリさん
でもね。
アゲアゲくん
ミドリさん
私、ずっとこのままかもしれないよ?
アゲアゲくん
それでもいいのですよ。
ミドリさん
え?いいの??
アゲアゲくん
ミドリさんがね。
アゲアゲくん
「これが私の道なんだ」と分かる。
アゲアゲくん
そのとき僕は嬉しいのですよ。
ミドリさん
・・!スゴい
ミドリさん
アゲアゲくんが天使みたいに思えた・・。
アゲアゲくん
あっはっは。
アゲアゲくん
僕はそんな立派なものじゃないですよ。
ミドリさん
・・アゲアゲくんってさ。ホントはなんなの?
アゲアゲくん
アゲ者です。
ミドリさん
ガクッ!
アゲアゲくん
僕は喜びたいだけ。
ミドリさん
アゲアゲくん
ミドリさんが幸せだと僕は嬉しいのです。
ミドリさん
それがアゲアゲの感覚?
アゲアゲくん
そうですね。
ミドリさん
私もなれる?
アゲアゲくん
なれますよ。

 

道はいくらでも

後半、禅問答のような二人のやり取り、大丈夫だったでしょうか。

「道はいくらでもある」

これが今回の主旨です。

 

ある人にとっては縁切りで幸せになるでしょう。

ある人にとっては関係を続けながらの模索が幸せになります。

 

・・といったら悩まれるかもしれませんが、大丈夫です。

 

違うと思えば引き返してください。

「これだ」と思うなら進みましょう。

 

アゲアゲくんは喜んで伴走いたしますよ。