第11回 突き放してしまう

ショッピングモールにて

ユウスケ
抱っこー。
ミドリさん
うん。
ユウスケ
わーい。
ミドリさん
あぁ、疲れるなぁ。

自宅

ユウスケ
抱っこー。
ミドリさん
・・・。
ミドリさん
・・・ムリ。そんな気になれない。
ミドリさん
忙しいから。今度ね。
ユウスケ
えー。
ミドリさん
私って・・・。
ミドリさん
外では抱っこして。自宅では突き放す。
ミドリさん
愛情薄いのかな・・・。
ミサキ
お母さん。
ミドリさん
なに?
ミサキ
明日、学校休んでいい?
ミドリさん
な、何を言ってるの?風邪じゃないんでしょ。
ミサキ
行きたくないの。
ミドリさん
ダメ。ワガママ言っちゃ。
ミサキ
・・・。分かった。

 

バタン!(ミサキ部屋に入る)

ミドリさん
・・・。
ミドリさん
あーなんだろう。イライラする・・。

 

翌朝・ミサキの部屋にて

ミドリさん
ミサキ朝だよ。
ミサキ
・・・。
ミドリさん
ほら、起きなさいって。
ミサキ
・・・。
ミドリさん
ここで甘やかしたら癖になるな。
ミドリさん
ずる休みは許さないからね!
ミサキ
・・・。
ミサキ
うぇーん
ミドリさん
起きて!学校行きなさい!!
ミサキ
いやだぁー!!
ミドリさん
泣くな!
ミサキ
いやー!!
ミドリさん
・・。
ミドリさん
・・・ん?
ミドリさん
やり過ぎてない?私。
ミサキ
いやー!!
ミドリさん
ミサキおかしくなってる??
ミドリさん
わ、分かった。今日は寝てなさい。

30分後

ミドリさん
あぁ・・私って・・・。
ミドリさん
第三者的に「虐待」だったらどうしよう・・。
ミドリさん
親の資格あるのかな。
ミドリさん
ミサキ、もっと優しい親の元に生まれたかったよね。
ミドリさん
でも私が育てるしかないんだ。
ミドリさん
ゴメンね・・・。
アゲアゲくん
ミドリさん。

コトッ(カップ置かれる音)

アゲアゲくん
まず落ち着きましょう。
ミドリさん
アゲアゲくーん。
アゲアゲくん
お話うかがいますよ。
ミドリさん
私、虐待してるんじゃないかな。
アゲアゲくん
・・。なんでそう思うんですか?
ミドリさん
ミサキがね。学校行きたくないって。
ミドリさん
寄り添えなくて。「行け」って突き放しちゃった。
ミドリさん
私、抱っこするのも苦手なんだ。
ミドリさん
「めんどくさいな」って思っちゃう。
ミドリさん
でも人前だと抱っこするんだよ、私。
ミドリさん
冷たい母親って周りに思われたくないから。
ミドリさん
冷めた気持ちで抱っこしてる。
ミドリさん
サイテーだ。自分のことばかりで大嫌いだ。
アゲアゲくん
・・・。
アゲアゲくん
「落ちこむ」ってなぜだか分かりますか。
ミドリさん
・・?
アゲアゲくん
心が熱いからですよ。
ミドリさん
・・・。
アゲアゲくん
本当に虐待している親はね。
アゲアゲくん
落ちこまない。反省もない。
アゲアゲくん
僕はアゲアゲ界から来たアゲ者。
アゲアゲくん
特技は人の心が見えること。
アゲアゲくん
ミドリさん暖かいですよ。大丈夫。
ミドリさん
冷たい言動はなんでなのかな。
アゲアゲくん
疲れてるんですよ。
ミドリさん
疲れ・・・。
ミドリさん
・・信じていい?
アゲアゲくん
はい。アゲアゲくんウソつかない!
アゲアゲくん
まずは気分をアゲましょうね。
ミドリさん
ちょっと元気出てきたよ。
アゲアゲくん
それは良かった。
ミドリさん
寄り添える母親になれるかな。
アゲアゲくん
なれますよ。
ミドリさん
なんで突き放しちゃうんだろう。
アゲアゲくん
突き放したときね。
アゲアゲくん
どう思いました?
ミドリさん
「許しちゃダメだ」かな。
アゲアゲくん
他にはありますか。
ミドリさん
「学校行って当然。教えないと」かな。
アゲアゲくん
なるほど。
アゲアゲくん
抱っこするとき、どんなこと考えてますか。
ミドリさん
「母親だから抱っこして当然」かな。
アゲアゲくん
疲れてしまいますよね。
ミドリさん
うん。下ろしたあとグッタリしちゃう。
アゲアゲくん
普段からムリをされているんですね。
ミドリさん
・・・。小さい頃からずっとそうだよ。
アゲアゲくん
ほう?
ミドリさん
母から怒られるのが怖かったから。
ミドリさん
「良い子でいなくちゃ」
ミドリさん
「機嫌損ねちゃいけない」
ミドリさん
ずっとそう思ってた。
アゲアゲくん
・・・。
ミドリさん
あぁ、気づいたよ。
アゲアゲくん
何を?
ミドリさん
ミサキが「学校行きたくない!」って言った時ね。
ミドリさん
「ヤバイ。不登校になったら母さんに怒られる。どうしよう」
ミドリさん
そう思ったなぁ。
ミドリさん
あー私なにしてるんだろう・・・。
アゲアゲくん
大丈夫です。
アゲアゲくん
ミドリさんは寄り添える母親になれます。
アゲアゲくん
今日の事も収穫がありました。
ミドリさん
収穫?どこが??
アゲアゲくん
「私はずっと我慢してきた」
アゲアゲくん
「母に怒られるのが怖かった」
アゲアゲくん
気づけましたね。
ミドリさん
うん。
アゲアゲくん
それが収穫なのですよ。
アゲアゲくん
僕の話すのはアゲ親学。
アゲアゲくん
大事なのは気づくこと!
ミドリさん
気づくのが成長なの?
アゲアゲくん
はい!
アゲアゲくん
地雷は気づけば避けられます。
アゲアゲくん
 地雷は物騒なので「バナナの皮」としましょう。

アゲアゲくん
バナナの皮を踏むのは気づかないから↓

アゲアゲくん
気づけばわざわざ踏まない。

 

ミドリさん
そうだね。

 

アゲアゲくん
失敗も、挫折も。辛い出来事も。意味はありますから。
アゲアゲくん
ミドリさん、アゲアゲになっていけますよ。
ミドリさん
そうかな。ゴメンね。強気になれないよ。
アゲアゲくん
そういうものです。大丈夫。
アゲアゲくん
整理しましょうね。
アゲアゲくん
ミドリさんにとってのバナナの皮。
アゲアゲくん
それは我慢が習慣化していることです。
ミドリさん
知らずに自分を抑えているのかな?
アゲアゲくん
はい。何かきっかけがあったと思います。
ミドリさん
私、小さい頃、母に反抗したこと覚えてる。
ミドリさん
でも勝てなくて。諦めた。
ミドリさん
それが影響しているのかな。
アゲアゲくん
そうだと思います。
アゲアゲくん
諦めたとき。どう思いましたか?
ミドリさん
母が激昂してね。ハサミ持ってきたの。
アゲアゲくん
・・え。
ミドリさん
「殺されるんじゃないか」って思ったよ。
アゲアゲくん
それは・・・。
ミドリさん
「逆らっちゃいけない。諦めよう」
ミドリさん
そう思った。
アゲアゲくん
・・・。
ミドリさん
私は「我慢しなきゃ生きていけない」って思ってたのか。
アゲアゲくん
今もそう思ってるんですか。
ミドリさん
思ってるね。
アゲアゲくん
本当に我慢しなきゃ生きていけないのでしょうか。
ミドリさん
私と母の間ではそうだった。間違いないね。
アゲアゲくん
世の中では?
ミドリさん
どうだろう。
ミドリさん
・・・分からないな。
アゲアゲくん
・・・。
アゲアゲくん
今日は沢山成長できましたね。
ミドリさん
・・そう?
アゲアゲくん
何年かした後にね。
アゲアゲくん
「今日の出来事は意味があった」
アゲアゲくん
そう思えますよ。
ミドリさん
ホント?
アゲアゲくん
ホント!アゲアゲくんウソつかない!

その日の夕食

ミサキ
・・・。
ミドリさん
なんて声かけていいか分からない・・
ミサキ
・・・。
ミドリさん
私の前だから大人しくしてるのかな・・。
ミドリさん
あぁ、そうか。
ミドリさん
この子は昔の私なんだな。
ミドリさん
怒ってゴメンね・・。
アゲアゲくん
今の良かったですよ。
ミドリさん
・・・え?
アゲアゲくん
気持ちに寄り添えていました。
ミドリさん
これが?
アゲアゲくん
そう。寄り添う感覚。共感ですよ。
ミドリさん
何もしてないし、言ってないけど??
アゲアゲくん
思うことが大事なのです。
アゲアゲくん
さっきのお気持ち。伝わっていますから。
ミドリさん
そうなのかな。
アゲアゲくん
そういうものなのです。
アゲアゲくん
道はちゃんとありますからね。

 

 

気持ちに寄り添うには

親子は鏡の関係にあります。

自分がムリをしていると、相手にもムリをさせてしまいます。

 

「自分は普段から我慢しているな」

こう気づければ「我慢を減らしていこう」と思えてきます。

 

アゲ親学は、心の仕組みに基づいて話す子育て論です。

 

自分にはどんな癖があって、どこに不満を抱いているのか。

ミドリさんとアゲアゲさんのやり取りを通して、気づいてください。

 

方法はありますから。大丈夫です。